11月3〜4日の二日間、新潟中越地震被災地で活動している医療従事者のサポートを目的としたボランティア活動に、関東学生クラブ委員会・委員長の荒川崇(明大MRC)と、競技運営委員長の虎石学(日大商学部)がNPO法人JVMAT(日本災害医療支援機構)の事務局スタッフとして参加してきました。
今回の体験を語るうえで、まずJVMATという組織について説明したいと思います。JVMATとは、震災等の大規模災害時や各種イベントに医師、看護師等の医療従事者やこれをサポートする一般スタッフを派遣したり、企業や他のNPOと協力して様々なサービスを提供することを目的に活動する団体で、約500名の医療関係および一般人が登録しています。(
http://www.jvmat.or.jp)
我々がJVMATの活動に参加するきっかけとなったのは、関東協会クラブ委員会の康乗克之氏(学生クラブ担当)のお勧めによる所が大きいと思います。JVMATを創設し、理事・事務局長でもある康乗氏から、我々にボランティア活動の参加を打診され、今回このような機会にJVMATに登録し活動に参加する事になりました。
作業内容としては、現地入りしている医療従事者の活動サポート、報道では見えてこない部分の情報を調査してくるという2点でした。報道等で見かける直接なボランティア活動ではありませんので、ピンと来ない方もいらっしゃると思いますが、各種サポートの重要性、必要性について説明いたします。
医療従事者−医師、看護師等は医療行為を主たる活動としているわけで、医療活動の周辺にある事務処理や各種事務手続、雑務等の負担をかけることは効率的ではありません。従事者を医療活動に専念させるためにもサポート・スタッフの必要性は極めて重要です。ラグビーの試合に置き換えて考えてみれば、各種大会&試合は選手だけでおこなえる物ではなく、レフリー・メディカル・水係・あらゆる大会役員が職務を分担し運営をすることによって初めてラグビーという競技をおこなうことができるのです。
関東学生クラブ選手権においても、コラボレーションシステムを導入しておりますが、ラグビーに携わる全ての人々の協力の上に大会が成り立っていることを選手は理解しないといけないと思います。作業内容は違えども、今回のサポートスタッフという存在の重要性・共通性を改めて痛感しました。
ここで今回の実際のタイムスケジュールをご紹介いたします。
(11月3日 初日)
9:00 東京 各種事務手続き
→10:30 東京発 関越道にて小出ICへ向かう
→14:10 小出IC到着 道路状況を調べるため小出警察署へ向かう
→14:30 目的地小千谷に向かう(途中いたるところで土砂崩落、交互通行のため大規模な渋滞 道路の補修工事が行われている)
→16:00 小千谷市街地に入る 市街地を回り情報収集作業
→16:30 小千谷総合病院到着 現地医療スタッフと合流 打ち合わせ等を行う 事務手続き
→18:00 病院出発 情報収集作業を続行
→20:00 小千谷出発 宿舎のある十日町市に向かう 十日町泊
(11月4日 2日目)
8:30 十日町出発 (小千谷に向かう 途中道路崩落多い 河川流域の土砂崩れ多数)
→8:57 越後川口IC付近 高速道路高架下の国道通行中余震に遭遇 震度5強 かなり強い揺れ 車内にも関わらず身動きが取れなくなる
→9:15 小千谷市内 建物基礎破壊多い 要注意・危険指定建物が多く見られる
→9:40 小千谷市内 JUSCO駐車場に入る 店舗は破壊 被害状況は甚大 駐車場にて仮設エアーテントの避難所、JUSCO仮設店舗が設置されている(食料品などを販売)併設のガソリンスタンドは営業 常駐医療スタッフはいないが巡回医療者が来ていた 避難所に教員が生徒の安否確認に訪れていた
→10:30 JUSCO出発 市内を巡回 市内スーパーマーケット・電気店等は完全とはいかないものの開いている ファストフード店は休止 コンビニエンスストアは営業再開店舗が多い
寺社の門柱・仏像・墓石等は軒並み倒壊 市内巡回&情報収集を続ける
→12:00 小千谷出発 東京へ
→17:30 東京到着 5日以降に出発するスタッフに現地の状況などを報告 収集した情報を申し送りする。
簡潔な感想としては、想像以上の被害でした。被害状況が極所に集中していましたが、報道等で見聞きしているものよりも深刻な状況でした。1日も早いライフラインの復旧、被災者の方々の心身の回復を願ってやみません。それと共に新潟県内のラガーマンのご無事をお祈りしております。
こういう事態のときこそ『ONE FOR ALL,ALL FOR ONE』の精神が生きてくると思います。日本国内で生活していく以上、このような直下型地震は誰にとっても他人事ではないのですから、被災地の人々にできるだけ協力をしていけるような環境を作る事が急務となっています。これを読まれたラグビー関係者の方のご協力を願ってやみません。
大会期間中のうえ、授業等のある平日でしたが貴重な体験を得る事が出来たと思います。最後になりましたが、このような貴重な体験の機会を我々に与えてくださったJVMAT関係者並びに現地医療スタッフの方々、大会期間中にも関わらず、快く参加を承認してくださったクラブ委員会・学生クラブ選手権社会人委員の方々、レフリーの振り替えを引き受けてくださったレフリー委員会の方々、大会スタッフの振り替えを了承してくださった学生委員に厚く御礼を申し上げつつ、今回の報告を終了したいと思います。(虎石学・記)
<関東協会・康乗克之委員よりひとこと>
荒川・虎石の両君に小千谷を中心とした被災地に赴いてもらった目的は、第一に既に現地入りしている我々の医療チームと合流し彼等をサポートすることにありました。虎石レポートにありますように、医療者が医療行為に専念するためには、これをサポートする一般系スタッフの存在が不可欠です。主たる活動内容は、情報の収集と伝達、他チームとのコラボレーションにおける折衝と遂行、食料・飲料水、移動および運搬手段、宿泊等の手配、人と場所と時間の割振り等、様々な領域に及びます。第二の目的は、我々の東京本部に被災地の情報を提供することにありました。発災から約2週間が経過し、現地医療のあり方が人命救助を中心とした救急医療から避難所巡回等の一般医療に変遷しつつあるという状況下、第二陣の派遣メンバーの選別と組成において、何としても現地の情報が必要であったからです。現に、両君の詳細な報告を受け、帝京大学救命センター医局チームの10名が被災地に入り、大きな成果をあげることができました。私が彼等に協力をお願いした理由は、関東学生クラブの運営メンバーとして日頃の献身的な活動振りを了知していたからであり、”One for All, All for One”というラグビーフットボールのスピリットをグランドのみならず被災地という場において発揮していただいたことに、心から感謝と賞賛の拍手を贈りたいと思います。