2002年・学生クラブ東西交流ラグビーフェスティバル・イン・菅平
レポート

残暑と日差しがまだまだ厳しい中、長野県は菅平高原にて学生クラブによる東西交流イベントが8月30日から9月1日までの3日間開催された。今年から日本ラグビーフットボール協会の主催事業となり、その記念すべき第1回目の大会には関東・関西の学生クラブ32チームが参加した。

 この大会は単に東西のチームが芝生の上での試合を楽しむだけに終わらない。レフェリーを目指す学生を対象としたレフェリー講習会、女子マネージャーを対象としたラグビーの現場で起きるケガの応急処置方法を学ぶ救急講座、さらにはラグビーをより安全にプレーしてもらうために普及育成委員である石塚武生さんのスキルアップセッションなど盛りだくさんの企画が同時に行われるユニークな大会となっている。

 まず初日の8月30日に行われた石塚武生さんによるスキルアップセッション。石塚さんは「頭を上げる。まっすぐ相手を見る。背中を丸めない。この基本姿勢がしっかりできれば絶対にうまくなるし、安全にラグビーを楽しむこともできる」と何度も強調。5チームずつ約百人を対象に1時間というセッションを3回行い、合計15チームが短い時間だったが、基本姿勢を再認識する機会を得た。石塚さんは「日頃、コーチがいないチームが多いと思うので、仲間だけで練習をする際でも首のトレーニングだけはしっかり行ってほしい。足を折ったって、じん帯を伸ばしたって、いつかは直る。でも首のケガ、首だけは絶対に避けてほしい。だから今日のポイントを菅平から帰っても忘れないで欲しい」と講習会を締めくくった。

 二日目の午前中は菅平観光センター2Fの大ホールにて指田直子さんによる女子マネージャーを対象とした「応急処置講座」が午前9時から行われた。東京都ラグビー協会クラブ委員でもある指田さん。現場での応急処置のベテランだ。「グラウンドの脇で立っているだけの女子マネではなく、自分の判断でグラウンドの中に入って応急手当ができるような女子マネになってほしい」と指田さん。「スゲ−ッ、血!とか言っちゃダメ。むしろ、頭は血が出やすいからね、大丈夫、大丈夫とパニックにならない言葉をかけてあげること」など、時に笑いを混ぜながらの講習会はあっという間に時間が過ぎた。受講した明治大MRCの清田さん(2年)は「もっと勉強しなくてはと思いました」と女子マネとして安全面に携わる重要性に気づいたと言う。

 同じくしてグラウンドでは将来レフェリーを目指す学生や、レフェリーがいないときに笛を託される学生を対象としたレフェリー講習会が行われていた。北海道の若手レフェリーとして期待される涌井大輔さんらが講師となり、約20人集まった大学生たちに笛の吹き方や、ノックオンなど手の振り方など基本中の基本を丁寧に教えた。「講習会の中に良い表情をしている学生がいました。きっと近い将来に彼は我々の仲間になるでしょう」と涌井さんは早くも若手レフェリーを発掘した模様。「大きな声を出すこと自体が今の若い日人には恥ずかしいのかもしれませんね。でも今日の講習会で少しは大きな声で大きな笛を吹くことを意識してもらえれば」と東京都のレフェリーとして活躍する塩谷浩司さんは講習会の感想をそう語った。

 二日目の午後から青々とした芝生のサニアパークへ全チームが集合。交流会の初戦が行われた。今年は32チームを4チームずつAからHまでの8ブロックに分け、初日を1回戦とし、翌日のゲームを決勝もしくは3位決定戦とした。ほんの少しの緊張感を与えてくれるシステムに加え、関東および関西協会公認のレフェリーがジャッジにつき、さらにサニアパークのフカフカの芝生が舞台という学生クラブにとっては願ってもない最高のコンディション。チームの振り分けについては「過去の実績を元にしながら、東西のチームが対戦できるように配慮した」(日本協会クラブ委員・平野さん)とのこと。若干のミスマッチもあったが、概ね実力差がない好カードが見られた。

 ゲーム後にはレフェリーを交えて両チームの簡単な交歓会がグラウンドサイドにて行われ、慶応理工と対戦した同志社エルフィンズのキャプテンは「関西のチームはまだまだスクラムトライや!モールで押し込んだろ!というスタイルのチームが多いのですが、慶応さんのようなボールを動かしていくラグビーを経験できて楽しかったです」とスピーチ。

 大会に参加した立教大芙蓉の沖山栄一郎くん(3年)は部員9名で参加した。「人数が少ないのに参加し、他のチームから選手が来てくれ、そうした交流ができたのが本当に良かったと思います。合同練習のような企画もあればと思いました」

 また日大経済の主将を務める前坂浩一くん(3年)は「緊張しました。メイングラウンドの芝生の上でみんなと伸び伸びとラグビーができたのが何よりです。せっかく東西のチームが集まるので2試合以上組めたら最高です」と大会を満喫した様子。

 大学のオフィシャルチームではない学生クラブだが、彼らもまた日本ラグビーを支える貴重なラグビー競技者たち。ラグビー協会と学生クラブが協力しあって大会をさらに充実したものにして行くことが期待される。(終)

(文・長谷川仁)



関東・関西から32チームが熱戦を繰りひろげた

約70名の女子マネージャーが参加

ラグビーは安全に!基本の姿勢が大切!

関東協会公認の湧井レフなどが熱血指導!