東日本クラブ選手権大会が発足して10年がたった。発足当時、全国規模の大会はおろか関東レベルでの大会がなかったクラブチームにとって、この大会の発足はまさに革命的出来事であった。めざすものが都道府県内で完結してしまうのと、上を目指そうと思えばいくらでもチャンスが保障されているのとでは、クラブのモチベーションは格段に違ってくる。各都道県すべてのクラブに門戸が開かれており、その結果、実力面のみならず、クラブの組織力、運営力は雪崩を打ったように向上しはじめた。システムを構築することによって、クラブチームは確実に成長を始めた。
あれから10年。一つの区切りを迎えた。そこで、毎年16チームの出場枠で実施されている大会は、22チームに拡大して実施されることになった。いつもは東北地区でブロック予選を実施しているが、今年は記念大会ということで1回戦から東北6県が出場し、通常だと対戦出来ない関東甲信越地域、北海道のチームと対戦する機会に恵まれた。
拡大トーナメント戦となった今年度大会で、決勝戦まで勝ち残った2チームは、東京(第1代表)の曼荼羅と、北海道(第1代表)のバーバリアンズ。2年連続で同じ顔合わせの決勝戦となった。昨年はバーバリアンズが先行し、終了近くに曼荼羅が逆転に成功して、24−19で曼荼羅が4連覇を達成した。ことしは捲土重来とばかり、バーバリアンズがどんなチーム作りをしてきたかが問われる決勝戦となった。
東日本クラブ選手権大会/歴代優勝・準優勝クラブ
第1回 |
エリス(東京) |
くるみ(東京) |
第6回 |
曼荼羅(東京) |
三洋(群馬) |
第2回 |
バーバリアンズ (北海道) |
くるみ(東京) |
第7回 |
曼荼羅(東京) |
勝沼(山梨) |
第3回 |
イワサキ(茨城) |
高麗(東京) |
第8回 |
曼荼羅(東京) |
三洋(群馬) |
第4回 |
イワサキ(茨城) |
曼荼羅(東京) |
第9回 |
曼荼羅(東京) |
バーバリアンズ(北海道) |
第5回 |
イワサキ(茨城) |
勝沼(山梨) |
第10回 |
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試されるクラブチーム
日本のクラブは西欧型のそれでないことは、多くの人々が指摘するところである。1クラブ内に複数のチームが存在し、子供たちからシニアレベルまで、クラブのメンバーは自分の希望でチームを選択することが出来る。そして、何といっても地域に密着し、その地域の人々のスポーツ活動の発信基地となっている。
日本ではこのようなクラブ組織はまだ出現していない。しかし、21世紀を前にして各地域でラグビー拠点作りの動きが活発化してきた。その一つが、北海道バーバリアンズに見られるような日本のスポーツ界ではじめて、NPO法人(特定非営利活動法人)となり、地域のスポーツ活動の拠点作りに乗り出したクラブが出現し始めたことである。また、東京の曼荼羅クラブも、近いうちにNPO法人格を取得する見込みである。東京の場合には地域密着型チームといっても職住が離れており、また一つの行政区画には収まりきれない範囲のメンバーシップを包摂するが、この問題を解決しない限り、首都圏での地域密着型クラブは実現しない。その意味で曼荼羅のNPO法人化は、まさにこれからの都市部での地域クラブのあり方を示す先駆例となるものである。
地域に根ざしたクラブ作り
最近文部省の「保健体育審議会」が21世紀初頭を見据えたスポーツ政策について提言をまとめた。それによると、中学校や高等学校の土・日曜の部活動を原則として廃止し、子供たちを学校から解放して家庭と地域に返そうとする政策の実現を提言している。週末の子供たちのスポーツ活動の拠点は、学校部活動ではなく、地域のスポーツクラブに委ねようとする施策である。そして2010年までに地域スポーツクラブを全国展開で普及育成する計画である。これが実現すると、20世紀に100年続いてきた日本のスポーツ環境は劇的に変化し、地域社会が大人から子供まで男女を問わず、スポーツの担い手となる時代がやってくる。
そうなった時、既存のラグビーのクラブチームはどうなるのだろうか? 今のままの同好会スタイルでは、そういう社会的役割を果たせないどころか、多くのクラブが消えてなくなるかもしれない。いま多くのクラブがNPOによる法人化や組織の再編に腐心している。単なる同好会からクラブ組織へのシステムの改変は急務の課題である。21世紀にクラブの時代が来るのか、草の根からのスポーツ活動の拠点作りにクラブチームが積極的役割を果たす時代がやって来たのである。
全国クラブ大会への途
この東日本クラブ選手権大会の上位3チームは、
1月7日から行われる「全国クラブ大会」へ出場する。曼荼羅とバーバリアンズは既に出場権を確保したが、東日本クラブ決勝戦の結果いかんで、第1、第2代表の枠が決定する。なお、第3代表は湘南フジクラブ(神奈川)に決定している。今年は1〜2回戦が沖縄県沖縄市の県総合運動公園で開催され、決勝戦は昨年同様、全国社会人大会・準決勝(秩父宮)と抱き合わせ開催となる。全国大会での関東勢の活躍が期待される。